9 チェ・イヌン『広場』 など

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  • #1825 返信
    noharra
    キーマスター
    #1831 返信
    noharra
    キーマスター

    田坂さま
    お手紙ありがとう。
    2回読まれたのですね。
    私は吉川訳に続いて、1,金素雲訳 冬樹社・現代韓国文学選集1 を借りたのですが、借りただけで呼んでません。

    崔仁勲(チェ・イヌン)『広場』について
    (1)「中立国」
    分断文学というものがあるという。北と南という分断状況を描く。

    この小説は、北と南の両体制とそれを支える思想を全否定してしまった、稀有な作品と言える。
    北と南の両方を否定することはできない。今でも多くの人がそう信じている。そんなことはない。「中立国」という選択肢は実際に存在してる。これを言うためにこの小説は書かれた。
    朝鮮戦争で国連軍に捕らえられた北朝鮮と中国の捕虜は約17万人。そのうち、北朝鮮と中国に帰りたくないという捕虜が約5万人居た。捕虜の行く先については国際的な激論が続いた。その中で「北にも南にも行きたくない」という選択肢も設けられることになった。
    A:「スターリン主義におけるマルチンルターは、まだ現れない。クレムリンに反抗する人は、異端審問所で火あぶりにされた。権威は今も健在だ。p223」2024年になっても。
    B:南では:「政治の広場ではいがみあっていた人たちが、裏道にたくさん造られた屋根つきの小さな広場、すなわちバーやキャバレーでは共犯者のように酒を酌み交わします。不正に得た金がばらまかれ、戸口でバイオリンを弾く卑屈な芸術家の顔に札束が投げられます。p64」
    そんな闇市みたいなのはずっとむかしの話だと思っていた。しかし今年の自民党のパーティー券問題では2千万円現金を机に突っ込んでましたみたいな話が平然と語られる。
    Bを聞いた以上、そしてそのような情況から日本が抜け出せない以上、私たちは日本を拒否し、できれば出ていく。そのように生きるのが普通ではないか。(ガザの惨状からもそう言える。)
    「トンムはどちらに行きたいですか」
    「中立国」p226

    「中立国」とは何か、実際にそこで生きていくことができるのか?それは問題ではない。それが存在するならば、そこにたどりつくことができるし、生きることもできる。作者はこう言い切っている。
    ファンソギョンや金時鐘が何十年も悩み、ついに「北」を全否定しないという途を選んでいるとき、崔仁君は高校生の時にたどり着いた「北の全否定」を撤回しなかった。

    私はこの明俊の「中立国」という選択は正しいと思う。選択としてというよりもむしろ思想の方向性として。
    人はしばしば、北か南か、左か右かといった1次元的にものごとを考えてしまう。しかし、共産主義と資本主義は全く違った種類の思想であるのだから、X軸とY軸というように2次元的に考えるべきだ。であるとすれば、Z軸方向というものにも存在の権利がある。それがここでいう「中立国」である。

    日本では1960年安保闘争の時に〈反帝反スタ〉を掲げて新左翼が誕生した。〈反スタ〉とはまさに、上記Aのような問題意識である。具体的には北朝鮮と中国、それにソ連という国家が掲げる理想をまったく信じないという態度である。北朝鮮と中国の国家に人権侵害が多いということを認めつつも、それを否定することは米帝などを利することになる、そうした思考法が捨てられない人がほとんどであるが、そのいきつく先が現在の悲惨である。
    私たちは、崔仁勲(チェ・イヌン)『広場』で「中立国」という思想を学ぶことは容易にできる。なぜならそれはわたしたちが昔から知っていたものだったのだから。しかし自分の身体でそれをはっきりつかみたい。それがかなりの危機を招き寄せる可能性があろうとも、それは少し怖いことではあるが。
    私が〈反帝反スタ〉と呼んでいたもの、それには一定の普遍性があると思う。(この項終わり)

    私が大学生のときから(ある意味で)信じている〈反帝反スタ〉という思想を、この「中立国」にどうしても重ね合わせたいと思ってしまいます。
    結末に希望がない、と田坂さんは言われますが、たしかに「別の次元への跳躍」は「こちらの次元」からは死去(あるいは脱落)にみえることもあります。しかし本人から見ると、どうかはそれほど明らかではないと思います。例えば会社で一生窓際族として生きるなど、ぬるい例ではそのような生き方もありえましょう。
    これだけは言いたいと思ったので、書いてみました。
    ありがとう、ございました。
    野原燐

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