戦争がなくなればそれでいい

禍津日神も戦争を憎んで、それを去らなければ戦争を下されるが、それは善人に戦争を下す神さまではない。戦争を承知しない神様である。戦争がなくなればそれでいいという神様である。ここに戦争を祓うことが可能になるべき道理がある。(略)

それが私の見た所に於いての平田先生の神道の神髄である。

(p98山田孝雄『平田篤胤』畝傍書房 昭和17年)

これは嘘です。山田孝雄はこんなこと書いていません。「禍」と「穢れ」を戦争に置き換えてみました。

 憲法9条の絶対平和主義を馬鹿馬鹿しいと今頃はみんな言うが、それはそうかもしれない。でも、<日本の伝統>に副ってないこともないのである。

憲法9条は<近代の超克>のヴァージョンアップ、いや戦争に負けたのだからヴァージョンダウンか?まあどちらにしても<近代の超克>の変種と理解しうる。憲法改正は<近代の超克>をさらに超克するといった形でしかなされえない、と思う。思想的に露骨に後退するようなことをするのは有害無益だろう。わたしは憲法9条が絶対だとも正義だとも思っていない。だが今時語られている改正案は程度が低すぎると思う。

だいたい、長い長い日本の歴史の中で最も優雅さから遠かった昭和の20年間に郷愁を持つとは、DV依存の変態か!

切断と現前のマジック

 どんなことでも、我ながら「すらすらと平気に」どんどん出来てしまうのは幸せなことだし、そこに“ある真実”があることも疑えない。しかるに、上記折口の文章ではそのことに対し「不思議に思う」とされている。

 凡庸な解釈では、行為する自己/意識する自己 の対立において後者の優位を信じるのは愚か、ということになるのだが、ここでは置いて、折口に従う。

 「上つ代は、意(こころ)も事(こと)も言(ことば)も上つ代、後の代は、意(こころ)も事(こと)も言(ことば)も後の代」と宣長は言った。*1そうだとすると、わたしたちは現代人でしかありえず、古は理解しえないことになる。しかし宣長の主張はそうではなく、古事記は「いささかもさかしらを加えずて古より言い伝えたるままに記されたれば、その意も事も言も相かなって皆上代の実(まこと)なり。」わたしたちが求めている真実はすでにここ(古事記)に「古の語言(ことば)」として在る!「上つ代の言の文(あや)も、いと美麗しきものをや」!

 宣長は上つ代を後の代から切断しながら、古事記に感動する宣長という回路だけに於いては、古はいままさに現前すると考えた。単に理解できるだけはなく現前し感動を与えるのだ。*2

 宣長による切断と現前のマジックは、弟子たちにはもはや何のパラドクスとも感じられず、だたただ古言(伝統)が勉強され研究されつづける。その流れの中で、万葉が「すらすらと平気に」読めるようになってきたのだ。

「すらすらと平気に」のまっただ中で、ひとはそれに異和を感じることはできないはずだ。なぜ折口だけが「なぜこんなに、すらすらと平気に」という疑問符を提出することができたのだろうか。

*1http://d.hatena.ne.jp/noharra/20040913#p1

*2:この<感動>が現在の靖国問題にまでつながってきた。

数分他人のブログを読んで分かる!こと

ネットでちょろちょろ、数分他人のブログを読んだくらいでなーにも分かるはずないだろ、という罵倒には十分根拠がある。

しかしその逆の面だってあるのではないか、という提起

noharra 『 そうですね。Panzaさんのいわれる通りですね。「その言葉を使っちゃいけないのか?」と問いを立てると議論になり、使う側には使うだけの理由があり紛糾してしまう。そうではなく、ただの感情論ではなく力を持った(おおげさに言えば関係の絶対性からの声に近い)発言には素直になるという態度を学びたいと思います。

「だから初めてブログを数分読んだからと言って何が分かるものでもない。」というのもまあ半分は嘘。1分でも数分でも、インターネット越しでも、かなり微妙な問題も分かってしまうことはあるものですから。

 CLさんへ。 わたしは根が無作法者なんですが、(良い方に)誤解してもらっているようですので、これ以上言いません。まあぼちぼちよろしく。』(2005/12/07 21:26)

mojimoji 『何か、一発で分かってしまうこと、ってありますよね。何かが「十分に」分かったということではないのですが、しかし、分かってなかったことを発見させられて、認識枠組が大きく変化するのを感じるというか。そういう瞬間。

自立生活してる重度障害者に初めて遭遇したときもそうでしたが、sidoさん(とその近くにいらっしゃる施設出身者の人たち)のブログを見たときにも、何かが物凄い勢いで分かった感じがしました。スゴイですよね。』(2005/12/07 23:27)

noharra 『mojimojiさん

 sidoさんたちのブログを(アンテナを通して)紹介してくれてありがとう。

「何かが物凄い勢いで分かった感じがしました。スゴイですよね。」とわたしも語れるようになりたいと思います。彼らのブログの(向こうにある/なかにある)現実はあまりに重い。だが(わたしの力量には余りに重い)と結局のところ切り捨てるのではなく、「分かる」というその思いを大事にすべきなのでしょう。

CLさんもここだけで分かったとか言ってないで、読んでください。彎曲を覚悟しなければ触れられない真実がそこにあるかもしれないから。』(2005/12/08 06:02)

http://d.hatena.ne.jp/noharra/comment?date=20051203#c

コメント欄より

概念集・5   目  次

概念集5に関する序文

1

幻想性と級数展開

3

批評概念を変換し…

7

ゲームの(不)可能性

9

スピット処理に交差するモアレ

12

電報の速度

14

表現における遠心と求心

16

資料の位置

18

爆風の現在

20

救援通信最終号を媒介する討論のために

23

裁判提訴への提起

25

肉体と身体に関する断章

27

包囲の原ビジョンへ

29

必死に「市民投票運動する」女性たちを見て(訂正前)

http://d.hatena.ne.jp/noharra/20120107#p1 を訂正しました。訂正前分は下記のとおり。

必死に「市民投票運動する」女性たちを見て

石に彫りつけるほどの、祈りをこめて、言葉を彫りつけよ。

さて、康有為は、中国の人心が十分覚醒していないという現状認識を論拠として、「革命すれば内乱を引き起こす」と言った。*1

これに類似の論理は現在でも、よく見ることができるものだ。

韓寒の、中国人の民度論がそうだ。(私は韓寒の根拠に同意したい気持ちもある。ポーランド以西はともかくロシア以東では89年の変革は下部民衆にマイナスをもたらしたのではないだろうか。その原因は日本と共通する「民主主義の弱さ」なのか?)*2

また現在、大阪市と東京都で「市民投票運動」が展開されている。*3現在最初のハードルを越えられるかどうかの瀬戸際である。今までの活動家はほとんどこの運動に冷笑的である。曰く「市民投票運動主催者の今井某の思想はこういう欠点がある。彼は活動家としてこういう欠点がある。また今の時点で、市民投票して負けたらどうする!!それは反原発運動の敗北を絶対的に確認することになる。でもって現在どちらかというと負けるのではないかと私は思っている。したがって「市民投票運動」には加担しない。」などなど。

彼が守ろうとしているものが、自分の内側の「真理」、自分は正しいという信念(しかも一つの投票結果で毀損されてしまう程度に脆弱な)でしかないことは明白だ。

私も実は「市民投票運動」に積極的に賛同したものではない。「脱原発」よりも「経済産業省の責任追及」が先に議論されるべきだと思っている。ただし311から十ヶ月、「脱原発(反原発)」運動は、今までどおりごくごく少数派の運動に閉じ込められてしまっている。一方、小さい子供を抱えた「母親」などを中心にした、新しい形の必死なアクティヴィストたちが生まれている。「ごくごく少数派の運動」から脱却するためには彼女たちに注目しそれを育てようとうする立場に立つべきだと考える。(育てようとうする立場、がエリート主義だが、それについては後から考える。)私は活動家だとは言えないだろう。ただ強く訴えたいことがある。それは、「橋下氏による君が代の強制」反対である。それが何であれ、「ごくごく少数派の運動」にしか発展しない日本史の現在があるように思う。そのように考え彼女たちに注目しているのだ。

大阪市民投票が(直接請求に必要な署名は有権者数の50分の1で大阪市では4万2670人分の署名が必要となる。)その数の著名を獲得したら、橋下氏にクリティカルな問いを突きつけることになる。形式上は市議会であるが今の現状では橋下氏が発言すればそのとおりになる。つまり4万2670人という民意をどう評価するか?という問いが突きつけられるのだ。橋下氏の権威は、「民意」というものを自分だけが独占的排他的に代表(表象代行)しているということを公言しそれが承認されることに根拠を置いている。したがって彼は別の実体をもつ「民意」の登場を激しく警戒している。市民投票の依頼が来ても協力するなと維新の会関係者に命令したことをもってそれは分かる。仮に通れば、彼は「脱原発の民意」はすでに私が代表(表象代行)しえているのだから、改めて投票は必要ないと言うだろう。私たちは「橋下=民意」という彼が勝ち取った等式を毀損するために全力を傾けても良いのではないだろうか。

運動とは、敵と私に同時にクリティカルな問いを突きつける、そうしたものである時本質的だ。

章炳麟は康有為の愚民観を批判して、民智は「ただ革命によって開く」と主張し、人民の自己発展の可能性に期待をかけて、革命の道をきりひらこうとした。*4

今年辛亥革命百周年だったが、辛亥革命研究家たちはみな異口同音に「革命いまだ成らず」と言っている。平均地権という万人の生存権を目指す孫文の思想とはあまりにもかけ離れた中国の現状は認めざるを得ない。韓寒の認識も同じだろう。

したがって、「何かを獲得するものとしての革命」への幻滅が広がっていることは認めざるを得ない。

そうではなく、章炳麟とともに私がここで言っても良いかもしれないことは、「アクティヴィズム(活動)によってわたしたちは自己発展の可能性を生きる」ことができるのだということだ。「将来に何かを獲得するものとしての革命」ではなく「自己閉塞を打ち破り連帯を生み出していく楽しさとしての革命」である。

アントニオ・ネグリ

これに関連しているであろうネグリの言葉を、子安氏が引用してくれているので孫引きしたい。

「確信しているのは、大草原に火を放つような、そういう「火」が世界各地に存在しているということです。」

https://twitter.com/#!/Nobukuni_Koyasu/status/154744236280000513

(1/8転記)

*1:p256 近藤邦康『中国近代の思想家』岩波1985年

*2:韓寒は鋭い風刺エッセイで中国で人気の小説家・コラムニスト。1982年生。年末に3つのコラムを書いて議論を巻き起こした。http://kinbricksnow.com/archives/51764907.html など参照

*3:例えば→http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/120106/20120106018.html

*4:p257 同上

死者と生者のための掲示板<北海>

201

問題とは何か? 2003/06/01 21:51

202

万世一系は捏造だ。 2003/06/08 17:35

203

永き平和の民 2003/06/08 23:43

204

『ダロウェイ夫人』を読んだ 2003/06/13 18:23

205

わたしは死者を見なかった。 2003/06/15 13:34

206

アイディンティティと仮装 2003/06/16 22:45

207

Re:アイディンティティと仮装 2003/06/18 21:54

208

わたしのなかの還元不可能な領域 2003/06/21 22:48

209

闘争主体と無垢 2003/07/06 21:49

210

触れたくないテーマと一番大事なこと 2003/07/17 21:26

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わが肉体の労働たとえば授乳 2003/07/20 09:51

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ローザ~アレント~ローザ 2003/07/20 10:43

213

今日も混沌未分なり 2003/07/26 18:05

214

祝 2周年! 2003/07/31 20:27

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日本は亡命者を受け入れろ 2003/08/01 21:49

216

ちょっと 2003/08/06 19:38

217

Re:触れたくないテーマと一番大事なこと 2003/08/12 22:22

218

摩多羅神と大黒天 2003/08/31 22:10

219

墓場の茶枳尼たち 2003/09/01 23:16

220

伝統の断絶 2003/09/03 09:41

221

祟(たた)る死者、祟らない死者 2003/09/03 11:39

222

神との性交と精液(1) 2003/09/06 14:36

223

神との性交と精液(その2) 2003/09/06 20:23

224

人間の尊厳が北朝鮮には無い 2003/09/13 23:26

225

性交と多数多様な空間 2003/09/21 21:08

226

朝川渡る 2003/09/23 22:38

227

Re:神との性交と精液(その2) 2003/10/07 21:03

228

サイードの死とシオニズムという常識 2003/10/07 22:53

229

追悼とは何か?「シャヒード、100の命」展 2003/10/13 23:15

0

AYA 2003/10/20 17:57

231

ゴビンダさん有罪確定 2003/10/25 11:06

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いとうさん 2003/10/27 19:46

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Re:いとうさん 2003/10/27 19:48

234

ビルマ~フィリピン人家族の強制送還 2003/10/29 23:10

235

即ち私を見るのである。 2003/10/30 07:26

236

某大前繁雄は哀れだ。 2003/11/01 11:53

237

国家の論理を越えて 2003/11/01 19:42

238

制度廃止の条件 2003/11/01 21:28

239

私とは誰か? 2003/11/03 18:40

0

私とは 2003/11/08 19:57

暴力と哲学

 ある暴力は、国家あるいは世界の意志をここで実現するためには、Aという存在ではなくその否定が必要だとする論理によって肯定させる。私たちの世界は権力関係によって成立しており、権力関係の歪みが論理(哲学)を必要とする。哲学が嫌われるのは当然だ。

脱北できなかった脱北者

http://www.asiavoice.net/nkorea/bbs/wforum.cgi?no=406&reno=392&oya=392&mode=msgview&page=0

朝民研掲示板から貼ります。

「野口さんといっしょに拘束された二名の脱北者を中国当局が強制送還してしまったようです。迫害のおそれがある場合は強制送還してはならない、というノン・ルフールマン原則に反する措置です。

http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/200403/10/20040310k0000m040115000c.html 」

「2人は、60年代に帰還事業で北朝鮮に渡った50代の男性と40代の女性で、日本に帰ろうと昨年11月末に中国に脱出。東南アジアで保護を求めるために移動中の12月10日、南寧市で支援に当たっていた基金の野口孝行さん(32)=逮捕、こう留中=とともに拘束された。基金や日本の親族らは「送還されれば、生命の危険がある」と釈放を訴えていた。(上記毎日新聞より)」

 日本政府は「帰還事業で北朝鮮に渡った元在日朝鮮人」であれば、日本への受け入れを認める、やむを得ない場合はそうしても良い、という基準を持っているようです。ただし国際的にも国内的にも内緒にして行うことになっている、ようです。内密の内に帰ってきた方はすでに数十人いると言われています。何故内緒にするのか。国内において、受け入れろ!という声より受け入れるな!という声の方がずっと大きいから、というのも大きな理由の一つでしょう。脱北者の受け入れに日本はもっと積極的に成るべきだと思います。

ファルージャなどへの攻撃を中止せよ

パレスチナ・フォーラムというMLからの転送。転送歓迎。

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      占領監視センターからの緊急行動要請 訳文

イラクの人々と共に連帯するための緊急要求

国際占領監視センター代表エマン・アーメド・カマス

国際占領監視センター

2004年4月8日

バグダッド占領

世界の人々と代表者に、国際連合で米国主導の占領軍による攻撃に反対するよう、イラクの人々は国際的な連帯を要求します。

 これらの攻撃がイラクの都市とその周辺に住む全ての住民を恐怖に追いやることを意図しているのは明確です。

 報告によれば、4月4日に始まった攻撃により、ファルージャだけで300人以上(*)のイラク人が殺され、さらに何百人もの負傷者で溢れています。

 アダーミヤ、スーラ、ヤモク、ファルージャの市街とその近郊、、ラマディ、バスラ、ナシリーヤ、カルバラ、アマラ、クート、クファ、ナジャフ、ディワニヤ、バラドおよびバグダッドでは特にサドルで戦闘が続いています。 住宅、病院、モスクのみならず救急車が怪我人を搬送中にも占領軍兵士や戦車によって爆破され、銃撃されています。

 ファルージャとアダーミヤは、民間区域を包囲し長期間抑留下におくことを禁止するジュネーブ協定も違反して、現在占領軍によって包囲攻撃の下にあります。病院も十分な医療援助、不可欠な医薬品と装備、あるいは輸血用血液供給の手段も奪われています。ファルージャでは包囲されているために、病院は医者に自分の家で野戦病院を開設するしかない状況におかれています。献血者が入ることさえ許可されていません。従って、バグダッドとファルージャではモスクが怪我人のために血液を集めている状態です。水と電気がこれまでの数日の間断絶されたままです。

 サドルシティでは、米軍ヘリコプターが住宅地域をロケット弾で攻撃し、家を破壊しています。外出禁止令が公式には出されていないなかで、米国軍兵士は暗くなってから街路を動いている車輌を発見すると戦車砲で攻撃をしています。火曜日の夜だけで、少なくとも6人の人々がこのようにして殺されました。米軍はすべての警察署とサドル市役所を占領し、包囲し続けているのです。

 このような攻撃がこれまでの1週間にわたって急激に拡大したのですが、それは決して占領されているイラクで新しい現象ではありません。文民への無差別殺戮、人々への安全保障義務の提供や電気もまともな医療のための社会基盤整備も拒絶している現実は、占有当局がイラクにもたらした「自由」を特徴づけるものです。

 我々は諸国家、市民社会と反戦および反占領の運動に対して団結の具体的な表明として、この恐怖の米国主導の戦争に対し、そしてイラクの人々を支援するために、この身の毛がよだつ事実を直視することを求めます。

 どうか米国によって指揮された攻撃を直ちに中止するよう要求するために、街頭に出てください。

 世界中の米国領事館と大使館の前で抗議と要請行動を組織化してください:

 この大虐殺を直ちに止めろ;

 イラクの都市や近郊の包囲攻撃を直ちに止めろ;

 攻撃下に住んでいるイラクの人々への援助を提供しようと努めている、人道・医療

支援組織にの立ち入りを直ちに認めよ;

 そして、「我が国」による占領を止めろ

 デモがすでに組織化された都市は、ミラノ、モントリオール、東京、イスタンブー

ル、ボストン、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ワシントン D.C. とニューヨーク

です。

 バグダッドの国際占領監視センターと連絡を取るために、どうか001 914 360-9079

あるいは001 914 360-9080に電話をしてください。

 また、電子メールは eman@occupationwatch.org です。

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