不穏当な発言

えーっと、だいぶ前の話だが、下記で引用してもらった。

http://d.hatena.ne.jp/spanglemaker/20050103#p3

 生きているかどうか分からないめぐみさんなるものに大騒ぎするわりには、半年以上中国に拘留されながら野口さんに対しては何故国民的救出運動が盛り上がらなかったのか。(略)

これもねぇ.日本に住む中学生が帰宅途中に北朝鮮に誘拐されることと,中国に行って向こうの国にとっての反体制運動して拘留されることがどうして同列に語れるのだろう.覚悟しなければならないリスクが全く違うではないか.

http://d.hatena.ne.jp/spanglemaker/20050103#p3

野口氏には自己責任があると。

<略>横田めぐみさん、拉致された日本人を北朝鮮から奪還せよ、というストーリーばかりが叫ばれるが、めぐみさんはまだ帰ってこない。帰ることが大事なのか。そうではなく大事なのは移動の(国境を越える)自由だろう。一人でも多くの脱北者に保護を与えることに積極的に成るよう、わたしたちは日本政府と中国政府に働きかけるべきだろう。

http://d.hatena.ne.jp/noharra/20041212#p2

「帰ることが大事」に決まっている.

北朝鮮人民に移動の自由を与えることや脱北者の保護を主張するのはかまわないが,なぜあえて拉致被害者を奪還することが<大事ではない>というような不穏当な発言を一緒にするのだろう.自説の説得力を下げるだけではないか.

北朝鮮による拉致被害者を奪還することと北朝鮮人民を抑圧から解放することは二者択一の問題ではない.朝鮮人民を救うために拉致被害者の救済を後回しにしなければならない理由があるならぜひそれを聞きたいものだ.

だいたい「不穏当な発言」とは何を意味するのだろう。a=Bという意見に対し反論があるのは当たり前だ。ある意見に対してそれは「不穏当だ」ということが応答になりうると考えるのは、「風通しの悪い会社」のような閉鎖空間でしか生きた(考えた)ことがないという証拠だ。

「北朝鮮による拉致被害者を奪還することと北朝鮮人民を抑圧から解放することは二者択一の問題ではない.」そのとうりですね。わたしのどこが不穏当かあなたは表現できていないが。

外国人はアチェから出ていけ

とりあえずリンク。

http://www.excite.co.jp/News/world/20050113224200/20050114M30.087.html

<インド洋津波>アチェ州の外国軍に規制 インドネシア政府 | Excite エキサイト : ニュース

http://www.excite.co.jp/News/world/20050113214008/Kyodo_20050113a362010s20050113214014.html

停戦交渉の用意を表明 アチェ独立派、政府も歓迎 | Excite エキサイト : ニュース

http://www.excite.co.jp/News/world/20050113205028/JAPAN-167069-1_story.html

新たな治安規制、外国人救援者の安全確保を意図=インドネシア情報相

http://www.excite.co.jp/News/world/20050113165901/Kyodo_20050113a356010s20050113165907.html

外国人は早期撤退を アチェ独立紛争が影落とす

津波孤児は売買される

 スマトラで大きな被害を受けたインドネシア・アチェ州などで、孤児となった子どもたちが「保護」名目で連れ出され、行方不明になっている。ユニセフ(国連児童基金)の調べでは、その数は四百人に上るという。

http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050107/mng_____tokuho__000.shtml

 ユニセフは四日、こうした子どもたちの早急な保護を求める声明を発表した。日本ユニセフ協会広報担当者は「ジャカルタに運ばれた約四百人の行方が分からないが、地元紙によると、アチェ州からメダンに避難した孤児五十人が空港で行方不明になったという。アチェ州で推定三万五千人とみられる孤児が人身売買の危険にさらされている。さらに、スリランカ北部でも三千人以上の孤児が出ており、うち九十人が何者か沖地震津波に連れ去られたという情報がある」と警戒する。(同上)

 インドネシア国内の組織については、「売買の規模から、インターネットの普及で広がった国際的なシンジケートだということは分かるが、実態は分からない」(ユニセフ協会担当者)。上智大学の村井吉敬教授(東南アジア経済)も「人権団体の活動が活発なタイでは、人身売買の実態がかなり解明されているが、インドネシアは不明な点が多い」とした上で、「国内には、多数の人身売買ブローカーがいるが、ブローカーと密接な関係を持ち、被害増の元凶になっているのが国軍だ」と指摘する。

 

 佐伯事務局長が解説する。「インドネシアの予算では、国軍経費の三割しかまかないきれず、大部分は闇ビジネスで稼ぐしかない。大麻や違法伐採した木材の密輸、賭博場の用心棒代、勝手に設定した道路の通行税などと並び、人身売買が稼ぎ口になっている」(同上)

次のような話も、

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20050107i113.htm

 「今月3日、2人組の男が来たわ。2人とも30代初めぐらい。キャンプを回って小さな子どもを見つけては、親はいるのかと聞き歩いてた」。バンダアチェの避難民キャンプで、主婦のアーティカさん(37)

http://d.hatena.ne.jp/takapapa/20050109#p2経由

外国人ボランティアの存在を嫌っているのは誰か?

インドネシア政府は反政府ゲリラの自由アチェ運動(GAM)の存在を強調(ないし誇張)しており、自衛隊が安全確保を要請したことや、援助活動をGAMが妨害しているなどとの報道がみられる。別にGAMがいいなどとはまったく思わないが、外国からの介入を唯一心配しているのはインドネシア国軍であり政府であることを踏まえた上で日本のマスコミの報道も注意深く読んでいく必要がある。

http://d.hatena.ne.jp/kenken31/20050112#p1 K A L A M

それは、インドネシア国軍である。

 (米軍の存在は良い、とみなされているのではないか、現地住民の半分以上には? 良いことをしている限りでは良いわけだが・・・米軍の国家戦略=「不安定な弧」対策の行方は気に掛かるが。)

報われない善意はない

 「報われない善意はない」というのは悪い意味で、である。金に困った人に金を貸してやったら、また金を借りに来る。疲れているのに仕方ないから愚痴を聞いてやったらそれから毎日のように電話が掛かってくる。そういうことがあるからわたしたちは日々善意を抑制しながら生きている。

 だが、募金はどうか。「恵まれない子どもたちのための募金」が呼び掛けられるとき、募金を募集している主体が誰か、その使途は何か、明確にされないことも多い。市役所、共同募金会、社会福祉協議会、テレビ局などが自己は説明するまでもなく絶対善だ、という前提で募金をつのる。募金者は自己の善意をそのまま、そのおおきな主体に委託する。千円を差し出せばそれはそのまま「恵まれない人たち」のもとに届くかのように説明され、わたしたちもそれ以上追求しない。

 ある人が「恵まれない」情況にあるとはどういうことか?それは彼/女のあり方にわたしたちの想像力が及びえないということではないのか。わたしたちの認識格子から抜け落ちてしまう存在が、恵まれない人々だろう。

「ユニセフによると、世界中で年間七十万人から四百万人が人身売買の犠牲になっており、そのうち、十八歳未満の子どもは百二十万人と推定されている。http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050107/mng_____tokuho__000.shtml 」

とネットの一部に書いてあっても、マスコミではそんなことは言わないのでわたしたちの認識の一部にはなりません。それは事実であって事実ではないのです。

 一般に「恵まれない人々」とは、色々な事情で私たちからの善意が直接届かない情況におかれていることによって恵まれないのだ、ということができる。そうすると上に書いたような募金に対する態度は笑止であることになる。

 被災者の姿に心を痛め何かしたいのなら、まず自己責任で募金先を選ぶことから始めるべきだろう。

 そしてちゃんとした募金先であれば、情報を知らせるメールが場合によっては読み切れないほど来る。(郵送の場合はもちろんメールほど沢山こないがそれでも数年にわたって来ることがある。)

 ニンジャさんの場合は、1/8から1/15の間に、けっこう長いメールが12通来た。*1

 正しい、正しすぎるメールが沢山来るのも迷惑と感じる人も多かろう。noharraはそれを正しいとして募金したのだから迷惑と感じるのはおかしいのだが、限りあるリソースを割かなければならないという点では「友達の愚痴を聞く」場合と同じだ。ただ友だちは近くにいるが、海外の被災者は(いない)(いない場所にいる)、というだけの違いだ。たった、五百円の募金でも関係はそれなりに成立する。関係が幽かであることに苛立ってそれを断ってしまってはならない。

*1:■スマトラ沖地震:アチェ被災者への義捐金のお願い インドネシア民主化支援ネットワーク  ◇義捐金のお振込先 郵便振替口座 00190-8-76398 アチェ人道支援キャンペーン にいくらか振り込んでそこにメールアドレスを汚い字で書き込んだら。「参加を希望される場合は、以下のURLをクリックしてください。」という参加確認確認メールが来て、クリックしたら。

サラリーマン長井さんを守れ!

 「私もサラリーマン。家族を路頭に迷わすわけにはいかない。告発するかどうか、この4年間悩んできた。しかし、やはり真実を述べる義務があると決断するに至りました」。そう言って長井さんは涙声になり、言葉を詰まらせ、ハンカチで目をぬぐった。

 「告発による不利益はないか」と尋ねられ、「不利益はあるでしょう」と答えてからだった。

http://www.asahi.com/national/update/0113/014.html

 サラリーマンなんていうと哀れな語感があるが、言いかえればNHKの正規職員ということであり、この日本では階層的に上位に属する。彼らに言論の自由がなければより下位の国民大衆にありようはずがないのだ。

この問題については、下記のブログの意見に全面的に共感する。

筆者は、最近のマスコミ各社の報道姿勢について「萎縮した自主規制とも思えるような」姿勢だとする。

 たまたま私のみた朝日新聞も(14日朝、33面)、NHK「圧力を受けず」安部氏「注文の事実ない」中川氏「面会は放送後」と被告発側の意見だけを見出しで強調している。*1 NHKという巨大組織が、圧力を受けていないという建前を答弁するのは当然であり、情報としての価値はない。それを見出しとして巨大な字で報道してしまうことの責任。自分の責任で一つの事実を事実として提示した長井氏に対し、報道機関がやるべきことはそれを事実として裏付けることであり、当局の反論を掲示し事実を相対化しなし崩しにしてしまうことではない!

http://blog.readymade.jp/tiao/archives/000973.html blog::TIAO: 明るみに出た報道検閲 ……NHK番組改変問題

道各社の記者諸君はNHKのチーフプロデューサを鑑として先ずは自社を内部告発する勇気を持とうじゃないか。

自らも血達磨になって尚且つ政府を追及するくらいの迫力がなければ、今この国を間違った方向へ押し流そうとする勢力に対抗できるわけはない。ことはそれほど重大なのだ。政府、財界が民間を巻き込んで推し進めようとしている国家権力の強化と監視社会はこの国を危うい方向へと舵を切りかねない。

*1:第二報だったからかもしれないが。

「和解」か裁きか

番組改編問題については、

http://www.bro.gr.jp/kettei/k020-nhk.html 第20号 女性国際戦犯法廷・番組出演者の申立て NHK

で、第三者機関が出演者米山リサさんの主張をだいたい認めている。

http://www.bro.gr.jp/kettei/k020-nhk.html 第20号 女性国際戦犯法廷・番組出演者の申立て NHK

ところが、NHKは申立人が「女性法廷」について重視し、大事だと指摘していた「裁き」に関する部分、たとえば「日本軍あるいは日本政府が、かつて過去に犯した行為が犯罪であったかどうか、その判断ですね。つまり、裁きですね。それを下す手段も経ないまま、したがって、処罰されず免責されたまま」とか、「法廷が和解を前提としたものではない。和解を予め目指したものではない、ということが大事だと思うんです」などの部分を全て削除している。

このようなNHKの編集によって、コメンテーターとしての発言の本質ともいうべき「裁き」の部分が全て削除されたため、申立人の発言内容が視聴者に唐突な感じを与えたり、裁きの場としての「女性法廷」の意義を軽視し和解だけを推進する人物であるかのように誤解されかねない状況が作り出されたといえる。

 日本人は正義より「和解」という言葉を好む。しかし上記のような、NHKとその構成員といった力量に圧倒的差のあるものの意見が対立したとき、そこに形式的中立を求めることは、しばしば強い者の言い分を承認してしまうことにつながる。イスラエルによる自爆テロ非難の強力さにこの典型的例を見ることができる。従軍慰安婦問題も60年以上の時間を隔てた、この<情報を操作する者>と<サバルタン>との対位の展開である。

「和解」という口当たりの良い言葉に早急に飛びつこうとする者には注意が必要である。

NHK・ETV特集から消された戦場の証言

NHK番組改ざんに抗議する!

政治圧力によって消された 

元兵士による戦場の証言

は下記で読めます。

http://www.ne.jp/asahi/tyuukiren/web-site/syougen/nhk_special.htm

一部引用する。

元陸軍伍長・金子安次さんの証言*1

――こうした証言をするには勇気が必要ですね。

 撫順でもこの強姦の問題は深く告白をしたわけではなかったんです。というのは、強姦というのは表面に出にくい問題で、管理所側は証拠がない問題は追及をしませんでしたから、強姦の問題は黙って済まそうと思えば済ますことができたからなんです。もちろん、その時には人間としての良心が芽生え始めていましたから、ある程度は告白したんですけれども、それはただ「強姦をした」という内容で、具体的なことは私は書きませんでした。…強姦というのは、これはちょっともう…。本当に残酷な問題なんですよ。

――戦場では強姦は頻繁に行われていたのですか。

 作戦中はね、それはもう毎日のようにやっていました。私もそうです。当時、中国の女性は纏足をしていて逃げられず、家にいることが多かったので…。

――こうした証言をするようになったきっかけはなんですか。

「慰安婦」だった人が名乗りをあげて、この問題が出てきたとき、これは言わなければいかんかなと思い始めたんです。その後、「慰安婦」問題で、戦争の実態を何にも知らない人間がこの問題でもウソを言い出してきて、これは言わなければいけないと、そう思ったんです。戦友会の連中は言わないでしょう、黙りこくっちゃって。年もとって体面もあるしね。

 しかし、事実は事実として伝えなければならない。そしてそれは戦争を行った我々にしかできないこと、我々の責任なんです。生きている限り、ありのままの事実を語りつづけていきます。

追記:上記に引用した部分ではないが下記にあるのは、「最後の3分にカットされた部分」に当たるようです。

http://www.ne.jp/asahi/tyuukiren/web-site/syougen/nhk_special.htm

長井:

まず最初に最後の三分でカットされたのは中国人の被害者の方の紹介と証言部分、もうひとつは東チモールの元慰安婦の方の紹介と証言部分、あと加害兵士、元日本兵士の証言部分その三点が全く抜け落ちました。

http://d.hatena.ne.jp/swan_slab/20050115#p1 + 駝  鳥 + から孫引き

*1:正確には証言後のインタビューより

からゆきさん

 id:noharra:20050115#p3 で引用した歩いている島田髷の女たちは、からゆきさんとも呼ばれるものたちかな、と思った。

 1972年に『サンダカン八番娼館』 山崎朋子 筑摩書房がベストセラーになってから、一時良く聞いた言葉だが、そう言えば最近全然聞かない。*1

意味は違うのだが、従軍慰安婦という言葉が良く聞かれるようになったのと反比例している。

 下記のサイトがあり、「 異国の日本人墓地の小さな墓石の下で眠るからゆきさんをたずね歩き回ったひとりの男が、弔いの気持ちもこめて開いたのがこの小部屋です。」とあり、丁寧な造りに好感が持てる。

http://www.karayukisan.jp/index.html

からゆきさんの小部屋

 「分布」という世界地図を見ると「このようにほぼ世界中に広がっていった」ことがよく分かる。「からゆきさんの数は、20万とも30万ともいわれています。」「日本人の影すら見当たらない地域にも、すでに100年前にからゆきさんたちは足跡を印したのです。」

http://www.karayukisan.jp/no3/index.html

Q1:いつのことなの?

 江戸時代の末から明治・大正、昭和の初め頃までの話です。

明治以降、日本はがむしゃらに資本主義化していこうとするのですが、はじめ外貨不足に苦しみました。そのときの彼女たちの貢献は決して無視できるほどではなかった。

 また、大正四年、全東南アジアの華僑が、日貨ボイコット運動を始め、日本国家の外貨獲得策は危機に瀕した。この時、日本国家は、暗黙のうちに『からゆきさん』たちの仕事を奨励し、彼女らの稼いだ外貨によってようやく危機を脱出した。

http://tadaokik.hiho.jp/borneo/16.htm ボルネオ紀行

一時期は日本の外貨獲得に貢献したほどだったそうですが、日本の日露戦争での勝利、第1次世界大戦での戦勝国としての地位向上、国力増強と経済進出の過程で「一等国日本の恥」とみなされて取り締まりが行われ、シンガポールをはじめに各地から1920年頃を境に次第に姿を消していきました。

http://www.f.waseda.jp/kanaike/class/gender/gender2004_02_10.htm  2004年度文学とジェンダー後期第十回

 マルチチュードなんて言葉も最近はあるが、定義はなんだっけ? 上品な人たちがなるべく見てみない振りをしているうちに10年、20年経つと社会の最下層に生きる女たちの国籍はすっかり入れ替わっていたりする、というようなこともあるのでは、というようなことに、わたしの問題意識はある。

反・従軍慰安婦言説の根拠には、娼婦は必要悪だとする、娼婦存在に対する絶対的差別意識がある。

*1:山崎朋子、森崎和江、村岡伊平治、は東南アジアのからゆきさんをクローズアップしたが、シベリア出兵から満州事変までの、満州周辺での女性たちの存在も大きい。