2013-01-04[デリダ]
■ デリダと松下昇のためのメモ
お正月なので、大きく考えてみましょう。
デリダと松下昇についてざっと考えて見ます。高橋哲也『デリダ』*1から引用します。
脱構築は、ある無制限な「肯定」の思想だ。
倫理的・政治的な無責任をよしとするどころか、「責任」の観念のある前代未聞の刷新を提起しようとするものだ。p118
…問いはまだ、それが探求しようと決意した言語を見出していないし、共同体の内部でのそれ自身の可能性を確信してもいない。問いの可能性についての問いの共同体。それはまことに微々たるもの、ほとんど無である。…p120
この3行については、私たちの〈自主ゼミ実行委〉の定義として採用しても良いと思われます。
(略)
プラトン主義形而上学は他者排除の暴力である、これがデリダの最初のテーゼだった。*2
しかし、プラトン主義形而上学を拒否できたら非暴力の世界を作れるわけではない。(cfp122)(レヴィ=ストロース、レヴィナスはその錯誤に陥った。)そこにあるのはむしろ、原エクリチュール、原暴力だ、と。
でナンビクワラ族の固有名の禁止について、p124以下で紹介しています、高橋は。
0.ある人の唯一性、独自性、固有性
α.固有名を付ける 原暴力
β.固有名を隠蔽する 第二の暴力
γ.固有名の禁止の侵犯
δ.固有名の禁止の侵犯=人類学に対する批判
ところで、α.固有名を付ける事は、あるシーニュ(単語)をもって独自性を指示することである。それがシーニュである以上、厳密に固有の名前など存在しない。
固有名の書き込みが原エクリチュールであり、第一の暴力であるわけです。
上のリストを補充拡大すると次のようになります。
(-2. 純粋無ないし純粋無意味 テロリズム)
ー1.自己の複数性、複素数性
けして生じなかったものの喪失、けして与えられはしなかったが夢見られ、いつも既に二重化され繰り返され、自己自身の消失においてしか出現することのできなかった一つの<自己への現前>
0.ある人の唯一性、独自性、固有性 p126
「現前・主体・意識・生き生きした志向」
α.固有名を付ける 原暴力
原エクリチュールは道徳性と不道徳性の根源、倫理の非倫理的開始、暴力的開始
規定すること形容することも同じ
β.固有名を隠蔽する 第二の暴力
修復的、防御的、道徳を設定し、エクリチュールの隠蔽を命じる
プラトン主義 善悪の階層秩序的二項対立を構成
γ.固有名の禁止の侵犯
悪、いさかい、秘密の暴露、レイプ (経験的可能性)原暴力から出現 p127
ある人Aが批判されるとき、彼は人格主体として、社会的・道徳的意識によって自己同一的存在として知覚される。p128
上の表での0.とαはむしろ等しい、と考えることができるわけだ。
「β(固有名を隠蔽する)第二の暴力」を乗り越えるためにはどうしたらよいだろう。
「光が暴力のエレメントなら言説に先行し言説を抑圧する沈黙と夜の暴力を避けるために、ある別の光をもってこの光と戦わなければならない。p136」「自分が言説として暴力的であることを自覚した言説、最小の暴力として選び取られた言語をもって 戦う。純粋無ないし純粋無意味に抗して」
がヒントになるだろう。
これについては、松下の方が分かりやすい、ように思います。
〈ー1.自己の複数性、複素数性〉という境位に戻ればよいわけで、それは単に書斎を出て、会議(大衆団交)の場に降り立てばよいだけだ、というのが松下の答えだ。
「これまでのあらゆる革命運動が見落としてきた領域を、現在まで人類史が累積してきた諸幻想領域との関連で把握し止揚の道を切り開くこと。*3」とヘーゲル風に規定されもするが、別の言い方もできる。
さて、高橋の本では次の文もあります。
Ouiを答えと思わなければ、ならない。p172
〈私〉の措定、存在の措定、言語の措定はこのウィに対してなお、派生的でありつづけている。
私たちは一つの委託を行った。*4
「大学闘争の提起したテーマ群の対象化に要する時間性が、人間の生涯より長いこと、また、対象化を要する空間性が眼前の社会総体を占拠し、かつはみ出していることを否応なしに前提とせざるを得ない過程*5」を比喩するために、最小の重さを持って私たちの前に登場した「33箱」=資料群、はゼロ=ゼロックス室(A367)である。上のリストでは、「ー1」になる。*6
したがって、わたしたちはそれにウィをいうしかないのです。
さらに、デリダは「ウィつまり、原-根源的な責任=応答可能性の継承が、まったき他者に発する均質で連続的な〈伝統〉として形成されてしまう事」に対して警告を発しています。*7
この抗議が〈散種〉であるわけです。(略)
つまり上のリストで、0より小さい領域でさらに肯定的にとらえうるものはすべて、西欧では「神」と言われる。それを避けるためのパフォーマンスが〈散種〉なのだろう。