六甲 序章

     不思議なことだ!            
     灰色の雲が岩塊の分身のように空を飛んでい

     それはあの荒々しい岩塊の臆病な模写なのだ
 
     (ハイネ「アッタ・トロル」から)


 平衡感覚を失わせるほど色彩のゆたかな屋根の波の上


 傾斜したアスファルトの坂道は、〈私〉たち以外の重
光を浴びる風景は、無意識のうちに、広い空地や露出し
というよりは、いつまでも、まどろんでいる欲求に支え


 勾配が次第に急になり、自分たちの影へ倒れかかるよ
幼い乳房のようにふくらんだいくつかの丘陵には、ここ
丘陵の上を汽船がすべる……? いやそうではない
坂道は、いつか海の方へ弯曲し、外国航路の白い船体が
更に坂道は反転し、一ばん高い山頂から花粉の香りを含
まぶしくふくれあがる海はいよいよ明るい青さをまし道


 首都では、いくら歩いても、せまい周囲しか見えなか
この意外さは、平衡感覚を失いかけている〈私〉たちの
〈私〉たちは、時間の切迫を忘れて、空間のまどろみへ
首都の広場や運河や路地に切迫した時間を付着させたま
しかしながら、〈私〉たちにとって、帰るべき首都はな
首都とは、特殊な状況をはらむ時間に対する〈私〉たち
どこにいようと時間を失った〈私〉たちは、沈黙してま
それゆえにこそ、これを書いているのは単数の〈私〉た


 〈私〉たちは、頂点から稜線を経て〈私〉たちを無関
このピラミッドを、首都や権力や組織や情念や、その他
しかし同時に、〈私〉たちは、さまざまのピラミッドの
頂点での統一から稜線上での分裂というパロディーは、


 〈私〉たちは、ひらめいて飛び立つ何ものかへの身が
従って〈私〉たちは、首都からもこの風景からも切断さ
内的風景へ同化することも許されない
もしも、〈私〉たちが時間の中へ新しい関係をつくりだ


 それを予感している限り、闘争の敗北後、さまざまの


 〈私〉たちのまわりで、いや私たちの中からも聞こえ
屍臭のただよう三つの論点と〈私〉たちのつま先が一つ
部屋の書類を処分し、身分証も定期券も持たずに闘争現


 ところで〈私〉たちは、この風景にみちているどのよ
たとえば唯一の前衛に入る直前に必読文献の行間から聞
その政党本部で乱闘のあった翌日、対策会議を開いてい
闘争敗北後の大会で、真昼の眠りの前の子守り歌のよう
しかし、それらの意味はとりだして表現過程にもちこむ
なぜなら〈私〉たちは、それらの意味の結合が一瞬のも


 この恥かしさは、倒すべき相手より先に、また組織す
波のように打ちよせる響きの方ヘ〈私〉たちがかけより
口を開き終らないうちに、叫びは〈私〉たちの知らない
しかし、この未来からの記憶群は、過去の闘争を頂点と
たとえば、国会広場に突入した〈私〉たちは、死者ので
そして、欲望の空間に舞う妖精たちに追放をかけ、倒錯
〈私〉たちと状況のこのような関係から〈私〉たちは歩
それが、死者への哀惜が失速しつつあるとか、模索を現


 人かげのない展望台をすぎると、〈私〉たちがえらん
展望台の望遠鏡と対岸の煙突という二種の円筒をつない
〈私〉たちは、罠をつくるのに似た抒情を開きながら、


 タンポポの黄が、暗くざわめく虚空の中でとらえられ
それと共に、黄をとりまく渦がまきおこり、環のように
そのむこうにある何ものかと、そのこちらにある何もの



 六甲 第二章 
汝は汝の恥辱をかたれ      
私は私の恥辱をかたろう      
(ブレヒト 「ドイツ」から) 

 〈私〉たちは、序章から踏み出したまま宙吊りにされ
それは一つの表現を複数の主体で分割したためにもたら
だが、この飢えを耐えて生きることを、何ものかが〈私

 本文の中に影を落す前に、永遠にはじまらない、ある
海から山へ吹き上げる風が〈私〉たちを引き裂いていく
そういえば、六甲とは一つの山のことではなく、おのお
〈私〉たちのそれぞれが、飢えの感覚を山頂の感覚に重
しかし、それらの響きが、自分の主張を固執する度合に



 〈私〉たちが、首都の時間から、この空間へ追放され
数年前の〈私〉たちの闘争を根底から支持する組織が皆
静かなデモや署名や講演をするばかりで、〈私〉たちを


 〈私〉たちは、かれらを根底からくつがえす反対派と
都市の大きさと政治水準の落差が、このように著しい風
あの山頂は、〈私〉たちがつくりだすたたかいのピラミ


 (ここが日本の労働運動の発祥地だというのは本当か
ピラミッドがケーキになり、広場は花時計に占拠されて
油虫のような荷役船が、大型船へすり寄っていく
海抜0メートル地帯で、ベトナム行きのジャングルシュ
船をとめろ
減速ブレーキからはみだす不快を、コンクリートの防波
心象の風景さえ見えないで、便利な私鉄で往還する君た
社会主義圏や革命組織が生きているなら、君たちは死ん
ジグザグ・デモで、空虚な街路を飾れ
冬から冬までゼネストだ
屈辱の中へ
下部から連続的に、理論の限界において、一瞬ごとに触



 〈私〉たちが、この風景の中へ反対派として歩み出す
一切の風景は、〈私〉たちが目をさませば、泡のように
風景への干渉のしかたが、このように分裂してしまうの
時間=空間の外部的な差異をもつ闘争へ踏みこむとき、
一方の条件を無視すればピラミッドは、案外たやすくと
しかしそれでは、本当に、たたかいにでかけることには
人々の表情は、闘争の前でも後でも、首都でも港でも変
が、このことは逆に、表情や文体が表現のピラミッドか
また、このことをちがった空間でちがった時間に気付く
このような内部ピラミッドの追求が結果的に現実闘争の


 (あなたも知っているように最も高い頂点が、一ばん
だから、かれは、ピラミッドを探しにいかずに、自分の
そのとき人目にふれる点を支える三つの点は、どんな風
あたしの直観では、副詞句による自己欺瞞→非必然的な
いずれにせよ、でき上がったピラミッドが、悲惨にもこ

  

 内的ピラミッドと外的ピラミッドのどちらを先に追求
両者を否応なしに包み込んだまま拡散していく六・一五

 一切の反被告団的発想を粉砕せよ
これは〈私〉たちの最低限のあるいは、頂点をなすスロ
ところで、被告団として権力と生活過程にはさまれて存
かれらの拡散するときのピラミッドは、〈私〉たちがも
〈私〉たちが、拡散を意識的にとらえるという場合、下


 (これは、歪んだ鏡の中の二人称をのぞきこむ一人称
むこうむきに鏡をのぞきこむ一人称の顔は見えないが、
こわれた無数の破片に、無数のだれかが対応していると



 歩行を止めよ
ここで立往生している感覚を、目的や連続性にとらわれ
〈私〉たちの山頂への歩行は、散歩のような解放感をも
乗物を用いず苦労して登り続けても、山頂は資本に選挙

 立往生の感覚……これを、いろんなときに味わってい
呪いのように道を横切る黒い蛇をみるとき
明日の食費もなく、手足をまるめて眠りに落ちるとき
突然の言いがかり的論争に対応せず沈黙をかむとき

 要するに、あるピラミッドの稜線上で((「稜地上」
ピラミッドの複数化を確認することによって、より巨大


 (かれらは、絶壁をはしごで登ることも、ブランコで
かれらの靴の裏には、二重の利用をされる砂の驚きが付
突然爆発音がとどろき、平地をとりまく崖の中腹から、
海の鋭角の切片に眼の片端を通過させながら、かれらは


 〈私〉たちが歩きだしたときから、〈私〉たちの頭上
はじめ〈私〉たちは、それを時間をくわえて〈私〉たち
だが、それは、意識とまどろみのズレがゆたかに開かれ
このとき〈私〉たちが、知らぬ間に、タンポポの妖精と
無意識的にえらびとる欲望のかたちこそ、〈私〉たちが
その反映へ身を投げ込むことによって、〈私〉たち以外



 (湿潤な部分へのめりこんでいくときの速度と、記憶
どうも今までのとは構造がちがうな、と考えながらも、
ハッとして引き抜いてみると、尖端にも、その斑点が増
しかも、遠くからの羽ばたきに似たざわめきに後をふり



 〈私〉たちは、最後のヴィジョンから発想してみるべ
一人のパルチザンとして出発した〈私〉たちは、不可視
〈私〉たちが、迷ったロバを探しにでかけて王国を発見
〈私〉たちは、自分だけでなく他の者も別の山頂に到達
そのとき、〈私〉たちは、ピラミッドという奇妙な概念
むしろ、〈私〉たちは、それを要求しなければならない
そのとき、六甲を支えている海が裂け、複数の山頂が重
その後に、六甲のままの六甲が、ひっそりと横たわって


 〈私〉たちからの六つの響きが、六つの主張のように
そして、その虚数の焦点へ六つの響きが集中していくよ
それら全ての何ものかを時間の中へ放てば生きられるか


六甲 第三章 
油コブシ
ケーブル六甲山上駅から約1キロ南の丘陵  
に突出した巨岩
海抜約六百メートルで、西方の摩耶  
山をこえて瀬戸内海を望む
かつてはにぎりこぶし状  
に上へ侵びていたが、尖端が徐々に風化されている
  


 私の中へ〈私〉たちがなだれこんだとき、〈私〉たち

 〈私〉たちの嘔吐の気配を感じとった私は、それを無
しかし、いつのまにか、私は、油コブシの尖端で眼を閉


 私はまだ意識を回復していない
第一章=序章、第二章=仮章に続く次の章をかけない苦
ともかく〈私〉たちは、私が墜落したのと同時に、私の
〈私〉たちの突差の行動で、〈私〉たちの各々は、互い
屍臭のただよう三つの論点しっかりと固定されている


 〈私〉たちは微少な時間=空間の転移のすきまで、次
苦しみから逃れるために〈私〉たちを墜落させた私の責
墜落という災難を逆用して、私の内部に食い下がり、い


 何よりも先に注意をひかれるのは人物であるが、未熟
しかし眼をそらさずに下へ降りていかなければならない
最初にすれちがったのは、骨の割れ目に足をかけて登っ
その次には、時計の長短針のように交差する血管にはさ
眼の機能を耳が、耳の機能を口が、口の機能を眼が果た
更に下へ降りる〈私〉たちは、足ぶみか跳躍をしている
粘膜壁にあるいくつかの光る斑点のためにできたたてま
屍臭のただよう三つの論点自分の影、その影のどこかの
最後に、じっとしゃがみこんだまま、不消化な岩の破片
どの人間も、年齢や性別が分らず、それらの人物たちの
それに、落ち着いて考えてみると、〈私〉たちは、ほぼ


 〈私〉たちのまわりから、形象たちをつつみこむ限界
せめて下の限界を、墜落しながらたしかめようと考えた
同時に〈私〉たちのつながりが、ガクンと一直線に伸び


 静止した〈私〉たちが、私の責任を、形象たちの前で
〈私〉たちはすぐに眼を開けてしまうと、この想像とく
〈私〉たちは、かれらが気がつかないうちに、彼らの一


 〈私〉たちは、あなた方の直系の血族として、六甲の


 〈私〉たちは、あなた方と同じく、存在しきれない苦


 人間が存在するとき、整数の性質をもって現れてくる
しかし、ここにいるあなた方は全て、整数からはみ出す
そして〈私〉たちは、その最も極端なかたちに分裂させ


 墜落を逆用して、〈私〉たちは、あなた方の連続性を
あなた方のうち、最も底にいる形象から次第に上方へ、


 あなた方や〈私〉たちを、未熟なまま早産せざるをえ
それはよいとして、〈私〉たちが告発する私の責任は次


 あなた方や〈私〉たちの形象をつねに、外部の時間と
従って、自己にも形象にも致命的な歪みを与えたこと


 〈私〉たちや、あなた方の直線的なつながりは、この
主体設定の変化が早すぎる
主体のりんかくが薄すぎる


 底に近い形象ほど無意識のうち時間にあやつられ、上
だからこそ〈私〉たちは、六甲の空間から、あなた方の


 〈私〉たちは私に要求する
内部の時間と外部の空間の間で形象せよ
たとえば、失神という瞬間から、太陽に入ったフライを
〈私〉たちでない、〈 〉たちへ、なぜ入り込まないか


 〈私〉たちは、あなた方の直系の血族である
これは、実をいうと、この上なく屈辱的なことだ
しかし、同時に、〈私〉たちの一人一人は、あなた方と

 いま〈私〉たちは、自分たちの限界のために、これ以
身体が不自然に伸び切っているし、窒息しそうだ
いつか必ず、もっと深く、もっと長い時間ここへ潜入し


 〈私〉たちは、あなた方の誰よりも惨めな形象だが、
そして、いましばらく、あなた方と離れていくことは、



 〈私〉たちが、このように、かれらにむかって語りお
その彫像あるいは巨岩によってひきおこされた風を受け



 〈私〉たちは、〈 〉を何重にも自分にまきつけたい

 突然の爆発音
……黄色い閃光が飛び散って、花びらのように開く



 内臓の底から吹き上げられた〈私〉たちが、風景への
私が失神しながら接吻しているので、黄色い花びらは血

 〈私〉たちにとって、はじめての外部の風景でありな



 花びらに映っているのは何だろう


 いや、文字が浮きでているのではないか
すでに綿毛になった花芯がペンになって書いた文字が


 とにかく何かが表現されているのはたしかだ


 私がいままでかいた形象たち、かれらからこぼれおち

 私がこれからかくべきヴィジョンなのだろう


 〈私〉たちのかかわり合いかたで、いろいろと変わっ
ほら、〈私〉たちの〈 〉が映っていると思えばそんな


 ふしぎなことに気がついた
花びらと〈私〉たちの意識をつなぐイメージあるいは言
しかも、より透明な意味をひきずりだしながら


 例えばどんなのだ
さっぱり分からない


 それは私が、いつかやってくれるだろう
また、〈私〉たちは私に、それをやらさなけらばならな


 いいたいことをいい切ってしまえ
とても苦しそうだから


 任意の部分に〈 〉をつけてみると、置き換えが可能
そして、イメージあるいは言葉が、個体→群→全体
個体←群→全体 個体←群←全体というようなことばで


 自由自在にか


 いや、ある領域内に制限されつつ自由に運動するので
逆にある領域内で自由に運動するもののうち、ある一つ


 それは怖ろしいことだぞ
極めて突飛ないいかただが、ここから、恒常的な存在の


 では、この花びらの形象はだれがつくりだしたのか


 失神している私とでもしかいいようがない
〈私〉たちは、いまのところ、私にむかって、〈 〉の


 手がかりはないのだろうか
何でもいいから、いってくれ


 恐らく、いま失神している私は、あるとき自己や世界
そしていまも出会い続けているのだろう
私にとっての戦後史の軸も、世代も体験も、国家も革命
ただし、自分では気づかずに
失神したときはじめて、このタンポポが、私の可能性を


 花びらに浮きでたものを〈私〉たちの一人一人がメモ
……みんなで協力して統一メモを構成しよう


 何度もかきかえていくときの基準はどうするのだ
切り捨てたり、残したり、順序を入れかえたりするとき


 切り捨てることによってしか〈 〉運動をおしすすめ
残るものは〈 〉運動の基盤、付け加えるものは〈 〉


 私への告発はどうなったのだ
それに一体、わたしたちは何ものなのだ


 〈私〉たちが私によって、私が〈私〉たちによって〈
だから、私への告発は〈私〉たちへの告発になる
〈私〉たちの誤りを追求することは、この世界の誤りを


 〈私〉たちはこれから〈 〉をつけて表れないことを
〈私〉たち以外の全てのものに〈 〉をつけに、再び内


 〈 〉は消え去るだろう
しかし、〈 〉のない世界は、〈私〉たちが永遠に変革
夢が恒常的な条件に限りなく近づくように! 〈私〉た


 そのとき、私は、何ものかの嘔吐によって意識を回復



 六甲 第四章

かって六甲山上には、いまの神戸大学付近と摩耶山天
上寺付近に砦があり、南北朝時代前夜の戦乱にまきこ
まれたが、六百年以上も前、東の砦へ押し寄せた六千
の六波羅軍を、摩耶山の西の砦へ逃げるとみせかけて
曲りくねった谷間へ誘いこみ、一気に襲いかかって全
滅させた
                  


* 第四章にむかってにじみでる〈 〉の運動をメモし

あるいは同じことだが、〈 〉の運動を展開しようと考
この促進が通過する道の標識には、次のような言葉が書

 
 変移の徹底化
主体や文体の不定化
可逆関係の拡大
発想の枠が交換可能になって、走りまわるようにせよ
循環、往還、ジグザグ状、ラセン状という風な運動方式

 
飛び去るメモの例……
 
 かすかにきしむ音を立てる霧につつまれはじめた油コ
海賊船の船先

 
 子宮の重量と共に増えている諸関係
何ものかのへの届出用紙

 
 日付の順序を狂わせても解読できる文書
非合法活動の他領域での応用

 
 行為の同時性だけでなく、論理の同時性を示している

 
 大量の紫外線の照射をうけて、他の菌の染色体をつか

 
 快活な対話者の内部で、無関係に機能している腸管た

 
 海と山にはさまれた細長い都市を並行に走る鉄道の同
著明な丘の反対側に位置する同じ名前のレストラン

 
 自分では知らないまま、暗い湾をとりまく光の帯を形

 
 非人称の風に、ひびの入った頭蓋のようなバスからは

 
 孤立しているために突入し、埋没する儀式

 
 街が、そのかかとで軽く踏まれるために作られた夕焼

 
 統一行動に関する二派の乱闘を、それぞれの党派につ

 

 このようなイメージを、自在に、また制約されて変移
異質の領域をα、β、γと名付けておくと、いまでは無

 
 情熱の形式が変移し、所属組織が分裂し、生活基盤が
 α1→←α2 β1→←β2 γ1→←γ2 と対比
 α1→←β0→←α2 γ1→←β3→←γ2 とい


 ぜひとも、いつか、γをあえて無視してαとβを公差
γから切断することで、ある意味ではαとβがより深く
しかし、その問題をはじめて提起しえたのは、αとβの



* ある時間=空間の重力偏差をもってα、β、γとい


また、それらの項を区分する根拠をあいまいにして放置
おそらく、そのことが、被告になる意味であり、この非


そうでない限り、6・15被告団とは最も異質な六甲空



岬の灯台に打ち寄せる鉛色の波へ

まず、〈 〉変移につきまとう、自己増殖的な幻想性の
その幻想性を生んだ関節をバラバラにとき放てば、その

 虐殺されたもの
 イデオロギー的批判で組織的に切り抜けたもの
 その関節を無視したもの
 知らずに生活し、病み、死んだもの
 なしくずしに利用しはじめたもの
 叙情的に旋回しつつあったもの

などの時間的変移をさぐることによって、別の主体の運


次に、この〈 〉変移の幻想性を、ここで、いま、とり

 事実性にしがみつき判断するもの
 恐れや反撥をアルコールで緩和するもの
 かかわりのない領域だと無視するもの
 組織活動に免罪符を求めるもの

などの空間的変移をさぐることによって、別の主体の構


 そして、この操作を、ちがった関節、ちがった幻想性



* 油コブシに〈 〉をつけはじめている……と書くと
この二重性を、どのように越えればよいのか、まだ分か


 〈 〉をつける箇所や、〈 〉をつけてから変移させ
ある箇所、ある方法へ決断した場合、他の場所、他の方


 二重性を含んだまま、〈 〉の変移を可能な限り展開

 必ず、これに対する粘着的な抵抗が生まれてくるはず

 このような操作の外部から加わってくる圧力も同じよ


 おそらく、待ちかまえている抵抗力は、序章から第三


 この予想は、いま不意に襲ってきたのであるが、〈六


 何ものかの挑発に乗ってしまうかもしれないけれども
これが、新しい罪を、打ち寄せる波のように引き寄せる


 ところで、いま、虹がかかっているよ、といって通り
〈 〉からはみだしていくものたちか?


* 何ということだ! 表現についやす以外の全ての力
他者が、メモの裏側へ自己を引き離そうとして、祈りに


 完了形の胎児と未完了形の胎児が同じ運命に陥ること


 第四章へのメモをかいていく気力がない
物象が反乱する
情念が錯乱すると、物象がそのすきにつけこんでくる


 完了形と未完了形にはさまれて、いままでのメモを支
〈 〉を用いて表現しようと試みたとき、思いもかけな


 もはや、第四章をかくのを放棄してもよいと覚悟して


 最も美しいときに開かれるメモ、あるいは眼


 血族の住む洞窟へ予定より早く帰ったとき、日没まで


 港内遊覧船の上で、工場廃液のしぶきを浴びながら、
六甲は反対側へ変移しても、太陽や星はついてきてくれ


 静か過ぎる風景に吊るされたために、塔の風鐸が微か
この都市のマークは六甲の弯曲と防波堤の弯曲を交差さ


 傷ついたようにけいれんし、上から抑えるのでかえっ


 たぎりたち、消え去り、しかも世界の体温を未完了の


 中絶の時間=空間が挿入されたのは、再起と深化のた
しかし、これは地下水道からの放棄の中絶と無関係では




* いままで走り書きしてきたすべてのメモにまつわり
しかも、もがけばもがくほど〈 〉が何重にもからみつ

 ちぎれて散らばったメモ……無人の高山植物園でも、

 
 〈 〉が生まれてくる契機は、ほぼ次の三種類に分け

 α、〈 〉の変移を徹底化しようとするとき

 β、αの運動に対する表現内からの不安を放置すると

 γ、αやβの運動に対する表現外からの不安を放置す

  
 ここで用いるα、β、γの記号は、前のメモで用いた

  
 α、β、γのいずれも、何ものかが〈 〉から疎外さ
けれども、〈 〉の運動は、それなりの必死の必然性を

 
 いま、疎外されようとしているときの回復の衝動と書


 α、β、γが、たとえば政治の領域において、相互に

 
 このような関係が、政治の領域だけにとどまらず、全

 
 α、β、γは、どんな危機にあるのか想像してみる

 
 それぞれの間に、変移しない一種の双極性があるので
たとえば、ある一つの事件の因子だけでは倒錯した現代

 
 双極性は、求心力と遠心力に似た、一方だけでは運動

 
 それらが統一されないことが危機なのであるが、この

 
 しかし、その場合、危機がとらえられたのは、ある一

 
 α、β、γが、この危機の部分をとらえていながらも

 
 遅れからの復帰は、遅れそのものの中にある時間的=
逆に、そのときはじめて、復帰すべき対象が実現される



*このままでは、生きた形象は、生まれてきそうにない
メモをかきはじめた段階と同じように、表現したい意識


 第四章を書こうとする試み自体が〈 〉に入ってしま
あるいは〈 〉からこぼれ落ちる時間からはさまれてい


 けれども、むしろ、その時間に突入しなければならな
そのことによって時間をひきよせるのだ
ちょうど〈六甲〉をひきよせてきたように


 第四章を展開しようとするときのメモ、この項をも含
そして、六項のメモたちよ、汝らのメモ相互の間隙に生
時間=空間の責任の力学を追求するために、自らをメモ


六甲 第五章

 視線が地図の上を、表六甲から裏六甲へつき抜けて
いくと、奇妙な地名が山系の両側に、ひっそりと息づ
いている
カミカ、ハクサリ、ザグガ原、ボシ、マン
パイ、シル谷、カリマタ池、キスラシ山、シブレ山……
地図なしにそこを歩いたら、ここが、そんな地名をもつ
ことを予測しえないだろう、と考えるときの怖しさ



 地図の上に舞い込んできたホコリを吹き払おうとして
微かな筒状のかたちに含まれている〈生命〉を、異なっ
十数本まではかぞえられるが、それ以上正確には綿毛と
しかし、この放射線状の毛がいまもっている方向へどん


 第四章の六項のメモたちが、相互の間隙へ直角に入り


       〈       〉

 かならず、すべてのものは、感覚に、とらえる前に弯
街の東端で用もないのに途中下車し、つくりたての高速
あなたの、うちよせては帰っていく運動の仕方は私のと
そして、ここからは見えないけれども、子午線の下あた


 そうだ知っている
雨あがりの川にかかっている橋である私は次のことも
六甲から性急に走り下る水勢を緩和するために、河床は
吸いかけたタバコのフィルターの色をした泥水は滝を垂
泡立つ水の前線は、前線であることが分るほどほど孤立
いくつにもとぎれた水の軍勢が左右不対称の前線を、た
ふりむくと河口のむこう、暗い巨船の上に暗い海が浮い


 時間が自律的に流れるにまかせ
圧力の少い空間へ自分が流れるにまかせている海が
海が……?

 ここは見なれた風景ではない、と思いこむとき、ひざ
海が、そのままの重量でショーウィンドウのガラスを飾


 〈かれら〉の恥ずかしさや、数字への不信や、肉親へ
そのとき氷山に似たピラミッドの何本の稜線を越えてい


 いく切れかの雪、いやタンポポの綿毛が降りはじめて


       〈       〉

 市電がそこで途絶える街の西端の街路樹の下で、だれ
それをたしかめにやってきたのが死者への思いやりとい


 ただ一つ残った海水浴場で貸ヨットを見ている失業者


 そのような声が、山系のこちら側と、海峡のこちら側


 さっきの声を聞いて、遠心=求心を一致させようとす
かんたんにいうと、この空間に〈ない〉全ての組織構成
きみたちのめいめいはこの空間にも、所属する組織にも
そして……

 仮装するとき

 所属組織の論理で一切の対象を扱うとき

 仮装者同志で会議・討論するとき

 最大限一致と最低限一致のふくらみをもつ方針を一切

 この投げつけや行動が、敵対者や無関心者から反射し
その反射が、仮装者をとおりぬけるのに、更に仮装し続


 これらのすべてのときに生じる不安を階級関係と対応
そのとき、同時にきみたちの仮装そのものをはぎとりな


 仮装組織論……とよんでもいいが、この組織論がひら
それを逆用して、ここに存在しない組織からの派遣者に


 ここに存在しない組織といっても分派闘争系列図を調
そのような図は、もっと深い位相での分派闘争を一枚の


 条件……一人でもやれるか? 舞台へではなく、場外

       〈       〉

 遠くからの訪問者があれば胸の谷間と首すじにある目
しかし、霧につつまれて夕方に最終バスがなくなると、


 同じ頃、いつか、ひらめきが訪れたらいくつか論文が
……

 第n論文に〈 〉をつけたのは、それを強調するため
第n論文が、永遠に仮構の位相にあることを示すのであ


 またnというのは、いままでかいてきた論文の順序で
たとえ結果としてそうなっても、主眼は、この仮構の論
諸註とは、このことを示している


 いま、ここで第(n-1)論文までの文章を構想する


 この仮定をするとき、第n論文以外のすぺての論文が
逆にいえば、こののことは、第n論文が意識的に、また


 〈 〉をめぐる諸註が、既成の研究論文の枠内に、ど
枠をこえて発散するか、枠の中で収束するか、枠をつく
ただし、きみたちの頭蓋が影の実体に触れたとき破裂し


       〈       〉

 私が知らない間に、映画をつくっている映像たち
この街で一ばん見はらしのいいといわれる大学への階段


 映像たちよ
撮影される前の自分に会いにでかけても無駄だ
六甲はいつも、そこにあると思われているところにある
いちばん必要なときと、いちばん必要でないとき、不意
タンポポの綿毛を流すほどの風があれば、六甲は揺れる
そして、だれかが疲れて手を放せば、いつでも背景や小


 複数の焦点と、隆起するフィルムのために生じた断層


 六甲は美しくて住みよいという満足感も、やがて未来


       〈       〉

 ペン先を入れた小さなケースをとりだそうとすると、


 楽にかいてみたら? 軽くとんでみたら? そのとき


 ペンを持つ手が答える
その誘惑はだれよりも自分がよく惑じている
同時に、はじめから楽にかこうとしても解決はしない
かきおわったときに、やはり、このかきかたが一ばん楽


 どこらも風信のとどかなくなったこの季節を逆回転す


 臨時工であることを示す黄札が、作業服の上で立ちす
……海底から水面を見上げると、のこぎり状の葉が浮く
……崖下を走る電車をみつめているときにも視界に侵入
牢獄でのわずかな散歩時間中に、くつ下をずり上げるふ


 油コブシが見ている坂道で花びらを押しひろげ、花芯
それでも、花芯のむこうの綿毛がとりだされ、その綿毛
あの幼児の運命を、こんどは自分がになうことになる
になうときにせまってくる力をすべて花開かせよう


 まどろみの間に、どこかで着地していることば……

 飛び上ろうとするとき、いままで殆んど意識しなかっ

 
 風に乗って舞うのは、関係のあるすべてのものに許し


 岩の肌や、茨のふところに落ちたときは、いま創りつ


 まどろみが、〈 〉のまぶたから、はみ出し、その直


       〈       〉

 首都へ、群衆がビルディングに吸いこまれる時間に到
ここは、ネオンの棲息する海、テレビ・アンテナの群生
いま、プラットフォームで鳴るベルを、発車の合図だと


 この列車をレールから逸脱させて六甲を横断して走ら
風のような非人称の苦しみを〈 〉のかたちをした貨車
ゼネストの前夜すわりこむときに持っているものの他は


 そのようにささやきかけても、たじろがないものたち


 いつ、どこへ出発しようとも、すべての風景と交換し
今日、最後にあの大衆浴場で会ったきみも


     〈 〉〈 〉〈 〉〈 〉〈 〉〈 〉

 六項のメモたちのとらえるヴィジョンは、このような
ここまで書いてきたとき、いわば表六甲を分水嶺にまで


 第四章の六項のメモたちの間へ降下する六項のメモの

 一つの過程をかいているとき他の過程を空間的に排除


 これらの不安は〈六甲〉をかこうとする試みが、その


 このようにかきつけるとき、すでに無意識のうちに〈
不安がみえてきたとき、山系の全体も、おぼろげにみえ


 そういえば、序章から第二章をへて第三章までが表六
だから第五章は、第二章と同位相にあり、第五章の六項


 ちがう点は、希望に似た不安がみえてきたことで、不


 ……

 その通りだ、と認めつつも、何ものかが私に語らせて


 おお、その告発を聞くために、ここまで書いてきたの

 告発の時間を早くおわらせたい……がしかし、いまま


 いままで、どの章をかいているときでも、できるだけ
けれども、分裂し、からみ合う構想を、できる限り時間


 とくに第四章をかいている最終過程で、メモ相互の間
この光は、ほんとうは、徴かながらも序章からずっと〈


 けれども、私は、この光を十分にとらえ切ってはいな
なぜなら、どの章をかきおわったときにも、とくに第四


 そればかりではない
その安らかなおののき
その空間も、ゆっくりと、しかし確実に変移しはじめ、
そのことに、いま気付いたから


 長距離コースを泳ぎ切ったものが、ゴールの後でもな
……もどっていく? 何ものかに投げかえされているの


 この断絶、この苦しみは、何かに似ていないか
そうだ! 切迫した時間を付着させている首都から、ま
時間に咲くタンポポとのすれちがいから、空間に咲くタ


 これらは罪の拡大再生産だろうか
……ここからは、もう、私だけのために語ろう


 切迫した時間から、安らかなおののきの空間への無意
安らかなおののきの空間から、切迫した時間への意識的

 そのとき、時間との接しかたに関する罪の深さが逆の


 いかにして逆転させるか
いまは一つの予感しかない
α・β・γの構造とその時間的な根拠をさぐること


 〈六甲〉からはみだそうとする油コブシで、こんなこ

 〈 〉が生まれてくる契機は、ほぼ次の三種類に分け


 α、〈 〉の変移を徹底化しようとするとき

 β、α の運動に対する表現内からの不安を放置する

 γ、αやβの運動に対する表現外からの不安を放置す


 α・β・γというのは、この湾曲した世界における何


 もし、そうであるとすれば、いや、必ず、そうである
また、このかたちとa・β・γ系のかたちとの比較でき


 〈六甲〉から、すべての不安の占拠がはじまる
いまは、一点でのみ時間の構造と接しているにすぎない


 不安をこの世界に深化拡大することによって告発し、


 はるかな時間=空間から、〈六甲〉へのささやきがや
これから占拠される不安たちのささやきが


 私はいま、序章に対応する位相にあると感じている
……すると私は、第五章を表現しようとしているうちに
あるいは、序章から第五章までを表現することが第六章


 断言できること……この瞬間から〈六甲〉をかき続け


 関係としての原告団よ、〈六甲〉を吹き抜ける風にの


 私たちのであうたたかいが、〈六甲〉第六章=終章を